現象学的ー津軽的

青森(とくに弘前)のこと、現象学(術)のことなど、書いていきます

青森と雪

予定より、1日遅れの行程ながら

どうにか青森県弘前市のアパートに入居しました。

着いた日(5日)は晴れていて

遠くの岩木山も見えました。

いわば雪国の穏やかな顔を堪能したのですが…

それからは、一転、雪が降りました。

弘前について、語りたいことはたくさんありますが

まず、この雪について話します。

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【雪が多くて泣いた】


雪とか、強烈な寒さは、そこに住む人々に

共通の「われわれ感覚」を作るようです。

凄まじい大雪の中、一生懸命に歩道を歩いているだけで

お互いに

「ごくろうさまです」

という感じです。

実際に、人とすれ違うと、そうやって声をかけたくなりますし

かけられました。

町の真ん中を歩いているのに、まるで、登山道です。


また、雪国の人々は、やたら働き者に見えます。

あちこちに巨大なスコップを持った人々が現れ

懸命に雪かきをしています。

 

弘前は、街の規模の割りに学生が多く「学都」を自認していますが

どうやら、この街で雪かきをしなくて済む人は

外から来た学生ばかりのようです。

ただ道を歩いているだけで、周囲の住人に申し訳なくなります。

 

しかし、当たり前ですが

東京や仙台のように、たまに雪が降って、ご近所が総出で雪かきして

「あー、いい汗かいたね」

「たまに身体を動かして、近所の顔を見るのもいいもんだね」

っていうレベルではありません。

 

雪かきは不毛です。

毎日、1円にもならないことをやりながら

次の日だって、どうせ雪が降るのですから…。

それが冬の間、およそ4か月も続くようです。


社会学的に一言いえば

21世紀の今日、なにをもって「われわれ感覚」を共同体が担保するのかは

かなり難しい問題です。


そこに排外主義的ナショナリズムが入り込む余地もあるわけですが

別に日本だけではなく

世界の人々も「われわれ」を抽出するのが困難な事情は変わりません。

ゆえに、「われわれ」の根拠薄弱さは

現代人の共同体をつくる根拠の薄弱さと、手法の劣化、困難を意味します。

 

が、雪国は、そうではない。と思いました。

冷たい雪が、等しく頭のうえに積もり

外に出て、一緒に「不毛な作業」に没頭しないと、生きていけません。

そこに「われわれ」の芽生えがあるのでは?

青森の人々が

やたら地元の話をする、地元にこだわる、アイデンティティの置き場とすることは

それなりに根拠があることなのでしょう。

それは単に観念的なモノ

ではなく

気候を通じた、具体的な、共同身体性のアイデンティティなのでしょう。



【コスト】

買い物について、2つのことが言えます。

青森は、日本全国でも最低水準の賃金に抑えられている土地ですので

たとえば、東京で月収20万円で出ているような仕事が

青森だと12万円。

東京で1000円のアルバイトが、青森では時給750円といったものが

ハローワークで見る限りの賃金事情です。

 

なぜ、青森の人が、それでやっていけるのか?は

簡単な話ではないでしょうが

持ち家率が高く、世代間の引き継ぎが可能だったり

兼業農家、兼業漁業がありますので

市場の賃労働に全面依存しなくてよい事情があるのかもしれません。

また、人によっては

賃金が安いのは、物価が安いからだと言います。

 

たしかに、居酒屋の飲み放題で

東京や大阪では3000円ぐらいかかりそうなコースが

2000円ぐらいだったり

東京では500円ぐらい払わないと買えないリンゴの袋が

200円ぐらいだったりもします。

だから、金がなくても生きていけるんだと言うわけです。



しかし、事はそう簡単ではありません。

家族で暮らしているなら未だしも

私のように、単身、アパートで独り暮らしとなると

一挙に事態は困難になります。

まず、暖房代が半端ではなくかかりますし

車を持たないことには、移動が困難です(雪が4か月も降りますし、店や職場が郊外

これらのコストは

都市生活者には必要ありませんから

青森や秋田の賃金水準が、東京の80-60%で良いはずがありません。


家賃にしても、確かに、同じ水準のマンションを都心で借りれば

青森の3倍ぐらいかかると思いますが

私のように、安いアパートの1室に住むものとしては

別に安いとは感じません。

(事実、いま借りてるアパートは、大阪の街中のアパートと同じ値段)


…と、グダグダ言いましたが

最も特筆すべきは、買い物、流通なのです。


大阪では、焼きそば、うどん文化がありますので

麺などがとっても安く買えます。

私の感覚だと、1玉15円で普通、1玉20円は高値です。

豆腐も一番安いところで、29円で買えていました。

ところが、青森のスーパー(大阪にあるのと同じ系列)では

どう頑張っても、うどん・焼きそばは、3玉セットで100円であり

豆腐も最安値で45円です。

野菜なども大手スーパーで買うと安くありません。

 

当たり前ですが、チェーン店に入ったからと言って、牛丼や珈琲が

東京や大阪より安いわけではありません。

…とすると

トータルでコスト計算したときに

私のような貧乏人は、大阪や名古屋あたりの流通に優れ

かつ、東京ほど高騰が起きていない土地に住むのが

最も経済的だと言うことになるでしょう。

青森や秋田では、賃金は大都市の8-6割の水準に抑えられ

かつ、日常生活コストは、明らかに、こちらのほうが上なのです。

 

「それでも!」

という強い意志をなくしてしまえば

コスト的には、あんまりラクではありません。

私にとって、それを補って余りある場所だと思うから、越してきたのですが。



【いつ外に出られるか】

私の家から、最寄りのコンビニ、スーパーは

大阪の水準からすると「全く近くない」ですが

それほど、どうしようもなく遠いわけではありません。

 

しかし、雪が降ると

たった数分、外出するだけで、雪だらけになり

身体が凍えます。

 

大阪にいた時代は、冷蔵庫をほとんど使わず

その日、その日ぐらいの勢いで

食べ物を調達していました。

明日も明後日も、店に行くのが、苦ではないからです

極端に言えば

ここにいると、今はたまたま外に出れたけど

次にいつ出られるか…

本当に分からなくなります。

 

1度でも外に出たタイミングで、できるだけ先の生活を見通し

多くのモノを買い込み

多くの用事を済ませて、外に出なくてもいいように

対策を立てないとダメだと思います。

 

引きこもりたいわけでなく

本当に、やれるときにやれることを、全て済ませておかないと

明日は出来ないかもしれないのです…

夕方でいいや、と思えば、夕方は吹雪かもしれません。

雪がこれ以上、強くなると、どこにも行けないのです。

いや、マジで。

はっきり言って、これが3月だから

まだ春への希望がありますが

もし、11月に弘前に引っ越してたら

いかに青森に思い入れがある私でも、萎えてた気がします。

 

大阪から野球留学で来る生徒たちは、本当に大変でしょう。

いろいろと。